プサン市内には、亀浦(クッポ)倭城が城郭としての全体像を比較的残している以外、多くの倭城は原型をいちじるしく失ってしまい、石垣が部分的に残っているだけです。都市化の波に洗われてすっかり消えてしまった城も多い。
その中で西生浦(ソセンポ)倭城は別格と言っていい。プサンに近い、と言うより蔚山(ウルサン)市の郊外にあり、今でも使えそうな形で残っています。プサンから40キロほど北にあって韓国を代表する現代自動車の本拠地として知られている工業都市だ。築城は加藤清正。
文禄の役で築城され、慶長の役まで続けて使用された。長くこの城を守ったのも加藤清正で、慶長の役の終わりごろの1597年、建設途上のウルサン城が明と朝鮮の軍に総攻撃にさらされた折、救援に駆けつけてかろうじて難を救った『ウルサン城の戦い』に出かけたのはこの城からでした。
もうすっかり有名な登り石垣 今日は上方から下方を撮ってみました。 |
大手虎口をしばらくj登って、今整備が進んでいる部分 |
加藤清正は文禄の役で北朝鮮の日本海沿岸地域を転々とし、旧満州にまで足を延ばした後はソセンポ倭城をベースに動いたようです。慶長の役に入って浅野長慶も加わり、慶長3年の後半には黒田長政親子もクッポ倭城から移った、という記録がある。
慶長の役が終わり、秀吉軍が撤退した後、朝鮮軍が施設として利用したことも原形をとどめるのに役だったかもしれません。その期間に朝鮮軍の手で変更が加えられた可能性は否定できませんが、畑や墓地に利用されたり民家が建てられた他の倭城に比べ、驚くほど「日本の城」が活きています。高石垣を見るたびに加藤清正を感じてしまいます。
プサン市内のKorail(韓国のJR)釜田(プジョン)駅からジーゼル機関車が引っ張るムグンファ号に乗って南倉(ナムチャン)までおよそ1時間。ナムチャンから鎮下(チナ)海水浴場までバスで15分くらい。バスは1時間に2本程度らしく、私はいつも20分ぐらいは待たされます。バスjの番号は715。蔚山(ウルサン)方面から来るバスで『鎮下(チナ)海水浴場』に行くことを確認してから乗るように。降りるのは『チナ海水浴場』という停留所。そのひとつ前が『ソセンポ倭城前』。ここで降りてもいいのですが、海水浴場で降りると、城がすぐ後に見えて、これもお勧め。
バスを降りて振り向けば目に入るソセンポ倭城 矢印の先に登り石垣が見えています。 |
石垣の修復ではないようで、さて・・・。 |
数年前から蔚山市が石垣の修復を続けています。この日もブルドーザーが入って大規模な土木工事が続けれていた。城の修復は嬉しいことですが、城の背後に目をやると、すぐ近くまで高速道路が伸びて来るらしく、道路を載せる巨大な土台がすぐそこまで来ている。韓国経済をけん引するプサンーウルサンの工業地帯がとうとうここまで伸びて来たか、と韓国の人には悪いけど暗い気持ちになった。
数年前に修復が終わった大手虎口 |
傾斜のアングルがきれいですね。 |
2郭から主郭への虎口 |
10メートルはあるのでは・・・。上の方がたいぶ崩れています。 |
私がカメラを向けると「まだ早い。4月に来なさい。」と、工事を監督する中年男性。桜を見物に来たと思われたようだ。ここは桜の名所で、3月末から4月始めは大変な人出だとか。確かに桜の木は多いけど、まだまだ硬いつぼみだ。
石垣を多用した倭城は多いけどソセンポの石垣は高い。特に外を向いた面の石垣は目測で7,8メートルはあるだろう。緩やかかな曲線がきれいだ。「扇の勾配」にたどり着く以前の未完成の曲線美か。
曲輪と曲輪が連続して設けられていて、それが枡形虎口で連続している様はどこから撮っても額縁に入れたくなる。天守台も残っているが、かなり石が崩れてきている。不思議なことに大手口と見られる虎口を通って中へ入っても出口がない。虎口と思われる個所で石でふさがれたところがあるのは、途中で修復したものか、朝鮮軍が使った時代に手が加わったものか。
巨大な空堀は同時に造られたものか、放棄されたものか・・・。 |
クッポ倭城と同じく、ソセンポ城も石垣に空堀や堀切が同居している。城の側面に空堀が走っているのが見えるのに、石垣が高すぎて、降りられず、空堀にたどり着けないのがなんとも残念。
あちこちで工事用のテープが張られているのを見ると、これからも石垣修復工事が続くということか。上部がかなり崩れてきている石垣が多いのは事実ですが、時代を感じさせて悪くない。あまりきれいに修復されるとどこか嘘っぽさが混じる。
城跡のすぐ後ろに伸びてきているのは高速道路では? |
主郭から見るとすぐそこまで工事が進んでいます。 |
このバスにはお世話になりました。 |
プサンの海水浴場で有名な海雲台(ヘウンデ)から直通のバス便があるようですが、私は個人的にバスより電車が好きなのでいつもムグンファ号を利用します。バスは一度乗りましたが、海際の集落を縫って走るので、随分と時間がかかったように記憶している。ムグンファ号(プジョンーナムチャン)3100ウォン(およそ310円) バスは交通カードを使用したので記録がありません。1100ウォン(110円)ぐらいと思う。
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