2013年11月28日木曜日

世田谷城散歩(2) まわりは寺と砦

世田谷城に遺構はあまり残っていません。世田谷線上町駅から歩いて3分くらいの世田谷城址公園はエセ石垣に騙されて本来の姿を失っていますが、じっくり見ると立派な土塁や空堀の姿が、ホラ見えてくるでしょ、不思議です。城址公園の石垣は土留めと城のイメージに合うので追加したのでしょうが、往時は土を盛っただけだったはずです。


世田谷城祉公園


公園に設置された案内板 北の広い敷地は豪徳寺

公園とその背後、土塁の残る部分です。 濃いグリーンは現存する土塁
城域を取り囲む細かい二重の点線は烏山川

公園をじっくり見て案内版を読めば「ああ、お城だったのだ。」と納得できるかもしれません。後ろに続く私有地に残る土塁や空堀はしっかり中世の城の面影を残しています。

豪徳寺の参道入り口の門をくぐり、山門に向って右側を注意して見ると、コンクリート塀の向うに土塁の頭が見えます。左側にも同じ土塁があったと思いますが、今はありません。右側の塀が終わったあたりで振り返ると土塁がしっかり観察できます。現在の参道は当時は空堀だったろうと見られています。土塁と合わせると高さは数メートルを超す規模です。

左奥に見えるのが豪徳寺山門 右の塀のむこうに土塁が見えています。

赤線の塀は2メートル。その上にさらに5,60センチ土塁が見えています。
3メートルぐらいの土塁だったのでしょうか。手前の空堀を加えるとその倍ぐらいでしょうか。


塀が途切れた場所から振り返ると土塁の大きさがわかります。


少し先の空地の反対側にも土塁がよく見えたのですが、久しぶりに行ってみると土盛がしてあってよく見えなくなっていました。何か建物が建つのでしょうか、残念です。建物が建つと土塁はすっかり見えなくなってしまいますね。

宅地跡の土塁が道路から見えていました。
豪徳寺参道横の土塁の対面です。

改築で建物を壊したばかりの家の庭です。土塁の高さは3メートル近いですね。


世田谷城の縄張り、城のなりたちは1979年世田谷区教育員会が出した『世田谷の中世城塞』を参考にしました。情報が極めて少ないため、城の全体像はよくわかっていません。発掘調査はこれまで豪徳寺の敷地を含め7回行われていますが、2005年に行われたのが最後で、今後の予定もありません。

豪徳寺の正門から西に一本の道が出ていて、今は暗渠になった烏山川をこえると目の前に勝光院の森が見えます。実に近い。300メートルぐらい離れているでしょうか。目と鼻の先、ほとんど城の中といってもよいくらいです。

勝光院は14世紀、初代世田谷吉良氏、治家(はるいえ)の創建と伝えられています。広い。うっそうとした竹林が残っていますが、敵が近寄りがたくするように竹を植えた名残でしょうか。「竹の上」にもこのような竹林が広がっていたことでしょう。
先の森が勝光院  ここから参道だったのでしょうか。

豪徳寺の半分近い広さ

やや高台

左が本堂

ここだけ音が抜けたように静かです。

勝光院の北、300メートルほど行くと世田谷八幡があり、これも広い。大きな曲輪が3つぐらい楽に作れそうな広さです。近くの町内の神社にはない大きさに、まず目を見張りました。

世田谷線宮の坂駅をはさんで見える豪徳寺の森
呼べば聞こえる距離?



「宮の坂」の元になった坂 拡張整備される前はもっと険しかったそうです。
ちょうどいい広さの曲輪を利用した?

土塁があったのでは?

すぐ横に空堀を掘れば・・・いつでも砦
この段差、気になりますね。

世田谷八幡も吉良氏の創建と伝えられ、城の弱点と言われた西側を守るため緊急時には城の役目を担った、とみられています。この先さらに300メートルほど行ったところにある常徳院も滝坂道に面してして、「いざ」という時を考えた、とみられています。

常徳院
 


ここまでの寺は城の西側を守っていますが、東にある勝国寺からは城がよく見えると同時に崖の上にあるので守りやすく、見張りの役にはうってつけの位置にあります。

勝国寺
コンクリート壁の上が勝国寺の墓地 下は烏山川の暗渠
 
勝国寺から見える豪徳寺の森 家がない頃はもっとよく見えたでしょう。



このほかにも赤堤砦(現 善性寺)、弦巻砦(弦巻神社近くのドングリ山)などの名前が伝えられていますが遺構は一切残っていません。しかも崖の上にある勝国寺以外はいずれも城郭とするには平坦で、やや周辺よりすこし高めかな、という程度。防御に特に有利な地形には見えません。見晴らしがきく、といった程度です。

主要な城域がやや狭い分、周りの砦や寺が緊急時に補うことで全体として城の機能を維持したのでしょうか。緊急時の城、というより分散した城なのかもしれません。私の勝手な想像ですが・・・。

ちょっと離れた三宿城はどんな場所でしょうか?滝坂道を東に向かってみましょう。(つづく)

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